池下藤一郎 様(池下産業/北海道・広尾町) 

●どうしてファームステッドに依頼したいと思ったのですか?

東京にいる知人のデザイナーに仕事を頼んだことがあるんです。でも、東京と北海道では距離が遠いこともあり、電話やメールで数回やりとりしてロゴマークやパッケージデザインが出来上がったらそこで関係性はおしまい。デザイナーがうちの生産現場に来ることはありませんでしたし、その後の展開について相談することもできませんでした。

このときの反省もあったので、きちんとした専門家と長期的な視点でデザインを活用するさまざまな可能性をディスカッションしながら、本格的に「ブランディング」に取り組んでいきたいと思いました。

●僕らが提案した「レボフィッシュ」というブランド名とデザインはとうでしたか?

僕らにはとても考えつかないようなアイデアで、おもしろいなと思いました。まさか「イワシ」も「池下」も入らないブランド名をつけることになるとは思っていませんでした(笑)。

最初は不思議に思った「レボフィッシュ」というブランド名やロゴマークですが、やっぱり良かったなという実感が日に日に増しています。東京で開催される食文化をテーマにした展示会「グルメ&ダイニングスタイルショー」にも出展しましたが、めずらしい商材ということもあって予想以上の反応がありました。

このデザインは外国人のお客さんにも「清潔感がある」と好印象を持ってもらえるようで、中国やベトナムなど海外にも徐々に販路が広がりつつあります。完成したばかりの加工工場の壁面にも、白地に青のマークを目立つように大きく入れてみました。

僕らも素人なので、はじめのうちはおしゃれなデザインの商品を作ればそれでよいと単純に考えていました。ロゴマークとかパッケージ、パンフレットとか。でも、ファームステッドは僕らがいままで見ていなかった部分、たとえばどのように「レボフィッシュ」というブランドが生まれたのか、背景にある「ストーリー」で訴求することの重要性などを提案してくれるんですよね。

こうしたブランディングの取り組みは金銭的なコストも当然かかりますし、売り上げに短期的に反映されることはないかもしれません。でも、旗印を掲げることで何よりもまず僕らが挑戦し続ける意識をもちつづけ、共有することができるんです。そして長い目で見たら、ストーリーが認知されることによって商品のブランド力や付加価値が上がることは間違いないと思います。

(「農と食と地域をデザインする〜旗を立てる生産者たち」本文より、一部要約)